産業革命が大恐慌の一因である

昔、世界史で「大恐慌」を学んだとき、私はそれを「歴史上何度も起きてきた不景気の中で、たまたま規模が特に大きかったものが、1929年のアメリカで起きた大恐慌なのだろう」と理解していた。しかし、その理解は少し違っていたのではないかと思うようになった。

産業革命以前の社会では、分業が十分に進んでいなかったため、労働者は多能労働者であり、一旦失業しても別の仕事に就きやすかった。また、生産性が低かったため、社会全体として生産余剰がほとんど存在せず、失業した人は食料を十分に入手できず、長く生き延びることができなかった。つまり産業革命以前には、そもそも大量の失業者が発生し難くく、仮に失業が発生しても、それは飢餓や死亡という形で解消されていたため、大規模な不景気はあり得なかったのである。

ところが産業革命以後、状況は大きく変わる。分業の進展のため失業者が別の仕事に就きにくくなり、生産力の向上によって失業者が生き続けることが可能になったのである。

このように考えると、1929年に起きた大恐慌は、それ以前に何度も起きていた不況の単なる大規模版ではなく、産業革命によって生じた新しい現象であった。